2020年12月25日金曜日

良知暁:シボレート / schibboleth

  space dike(スペース・ダイク)では、2020年12月25日から27日、2021年1月8日から11日に、良知暁:シボレート / schibboleth を開催します。

※会期を延長します。詳細は追ってお知らせします。(2021/1/16記載)




『シボレート / schibboleth』に寄せて

ある一節を数年にわたって持ち歩いている。「Write right from the left to the right as you see it spelled here.」。この一節は、1964年にアメリカ合衆国ルイジアナ州で行われた投票権をめぐるリテラシーテストに27番目の問題として出題された。民主主義を維持するための最低限のリテラシーの証明を表向きの理由に掲げたテストは、実際には黒人の有権者登録の阻止を目的としていた。こうした目的の下で、その一節は複数の解釈可能性によりその指示内容を変え、採点者が恣意的にその正誤を決めることができるものとして存在していた。

この一節をひとつの詩として持ち歩く。「raɪt ráɪt frəm ðə left tə ðə raɪt əz juː siː ɪt spelt hɪə.(ライト ライト フロム ザ レフト トゥ ザ ライト アズ ユー シー イット スペルト ヒア)」として。繰り返すなかで、ときに/r/と/l/の発音が揺れる。旧約聖書の士師記には、エフライムとギレアドの抗争において、両部族の境界線となるヨルダン川を制圧したギレアド人が、川を渡り逃げるエフライム人を阻止するために「シボレート」と言えと強要する場面が描かれている。「川の流れ」を原義に持つこの言葉は、その意味ゆえにではなく、その発音の微細な差異によって、エフライム人を識別し、暴力によって殺すための合言葉として存在していた。シボレートは、1923年9月1日に発生した関東大震災の混乱の中で、差別感情に基づく流言蜚語の拡散とともに「15円50銭」などさまざまな形をとり、日本人は朝鮮人を識別し、殺害した。

その詩を口にする。正しく発音できているかできていないかにかかわらず、選別の記号としてではなく、それが記憶するものを忘れないために。個々の発音の差異が、識別しようとする対象の境界線と正確に重なるわけではないことを忘れないために。「schibboleth(合言葉)」と題された詩のなかで、パウル・ツェランは「no pasaran(奴ラヲ通スナ)」を合言葉に叫べと呼びかける。選別と排除の機能を負った合言葉を、ファシズムを推し進めようとするものに抗って連帯するための合言葉へと転回させる。

「Write right from the left to the right as you see it spelled here.」。この一節は、「ここに綴られているように、『right』と左から右に書きなさい」と読むことができる。そこに、いままさに獲得/回復しようとするものを自らの手で書き記す行為を想像する。



シボレート / schibboleth

【会期】2020年12月25日(金曜)〜27日(日曜)、2021年1月8日(金曜)〜11日(月曜祝日)※会期を延長します。詳細は追ってお知らせします。(2021/1/16記載)

【開廊】13:00-19:00(金曜は16:00-20:00)
【会場】space dike、東京
 〒111-0021 東京都台東区日本堤2-18-4
 東京メトロ日比谷線 三ノ輪駅3番出口 徒歩5分
 https://spacedike.blogspot.jp/
 https://twitter.com/spacedike/
【入場料】 300円

※体調が優れない方のご来場はご遠慮ください。
※換気のため窓を開けますので、暖かい格好でお越しください。
※来場者が多数の時は、お待ちいただく場合がございます。
※様々な状況の変化により、オープン時間、会期を変更する場合もあります。
※dikeから来場された方々に向けて感染症に関する情報を発信する場合があります。ご来場からしばらくの間は、dikeのツイッターアカウントFacebookページを定期的にご覧ください。
直接のご連絡を希望される方は、会場で用意した用紙にお名前、連絡先をご記入の上、封筒に入れてお渡しください。感染症に関する連絡のみに使用し、会期終了2週間後に廃棄いたします。


【プロフィール】

良知 暁(らち あきら)
1980年静岡県生まれ。「投票」をキーワードとする広範なリサーチを基に、表象や制度をめぐる政治性を考察する作品を、テキスト、写真、パフォーマンスをはじめとするさまざまな形式で発表している。また、「歩行」や「質問」といったシンプルな行為による実践を断続的に継続している。近年の主な展覧会に『Quiet Dialogue: インビジブルな存在と私たち』(東京都美術館、2018)、『支流:Looking for the way of resistance』(HIGURE17-15cas、2016)があり、blanClass、art & river bank、TARO NASUなどでも作品を発表している。制作活動のほか、編集や翻訳に携わり、2015年には後藤桜子とともに『Optional Art Activity: summer school』(Take Ninagawa)のキュレーションを手掛けている。


<関連イベント>
トークイベント「お互いのやってることを話す、zoomで」

【日時】2021年1月9日 20:15~22:00
【配信】YouTube(タナランchannel)
【料金】視聴無料
【出演】佐々瞬、良知暁
【公開期限】生配信のみの予定です
【協力】space dike、TURNAROUD

※放送の遅延などが発生する場合がございます。予めご了承ください。
※配信内容を録画するなどして再配信する行為は禁止させて頂いております。

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