2020年12月25日金曜日

良知暁:シボレート / schibboleth

  space dike(スペース・ダイク)では、2020年12月25日から27日、2021年1月8日から11日に、良知暁:シボレート / schibboleth を開催します。

※会期を延長します。詳細は追ってお知らせします。(2021/1/16記載)




『シボレート / schibboleth』に寄せて

ある一節を数年にわたって持ち歩いている。「Write right from the left to the right as you see it spelled here.」。この一節は、1964年にアメリカ合衆国ルイジアナ州で行われた投票権をめぐるリテラシーテストに27番目の問題として出題された。民主主義を維持するための最低限のリテラシーの証明を表向きの理由に掲げたテストは、実際には黒人の有権者登録の阻止を目的としていた。こうした目的の下で、その一節は複数の解釈可能性によりその指示内容を変え、採点者が恣意的にその正誤を決めることができるものとして存在していた。

この一節をひとつの詩として持ち歩く。「raɪt ráɪt frəm ðə left tə ðə raɪt əz juː siː ɪt spelt hɪə.(ライト ライト フロム ザ レフト トゥ ザ ライト アズ ユー シー イット スペルト ヒア)」として。繰り返すなかで、ときに/r/と/l/の発音が揺れる。旧約聖書の士師記には、エフライムとギレアドの抗争において、両部族の境界線となるヨルダン川を制圧したギレアド人が、川を渡り逃げるエフライム人を阻止するために「シボレート」と言えと強要する場面が描かれている。「川の流れ」を原義に持つこの言葉は、その意味ゆえにではなく、その発音の微細な差異によって、エフライム人を識別し、暴力によって殺すための合言葉として存在していた。シボレートは、1923年9月1日に発生した関東大震災の混乱の中で、差別感情に基づく流言蜚語の拡散とともに「15円50銭」などさまざまな形をとり、日本人は朝鮮人を識別し、殺害した。

その詩を口にする。正しく発音できているかできていないかにかかわらず、選別の記号としてではなく、それが記憶するものを忘れないために。個々の発音の差異が、識別しようとする対象の境界線と正確に重なるわけではないことを忘れないために。「schibboleth(合言葉)」と題された詩のなかで、パウル・ツェランは「no pasaran(奴ラヲ通スナ)」を合言葉に叫べと呼びかける。選別と排除の機能を負った合言葉を、ファシズムを推し進めようとするものに抗って連帯するための合言葉へと転回させる。

「Write right from the left to the right as you see it spelled here.」。この一節は、「ここに綴られているように、『right』と左から右に書きなさい」と読むことができる。そこに、いままさに獲得/回復しようとするものを自らの手で書き記す行為を想像する。



シボレート / schibboleth

【会期】2020年12月25日(金曜)〜27日(日曜)、2021年1月8日(金曜)〜11日(月曜祝日)※会期を延長します。詳細は追ってお知らせします。(2021/1/16記載)

【開廊】13:00-19:00(金曜は16:00-20:00)
【会場】space dike、東京
 〒111-0021 東京都台東区日本堤2-18-4
 東京メトロ日比谷線 三ノ輪駅3番出口 徒歩5分
 https://spacedike.blogspot.jp/
 https://twitter.com/spacedike/
【入場料】 300円

※体調が優れない方のご来場はご遠慮ください。
※換気のため窓を開けますので、暖かい格好でお越しください。
※来場者が多数の時は、お待ちいただく場合がございます。
※様々な状況の変化により、オープン時間、会期を変更する場合もあります。
※dikeから来場された方々に向けて感染症に関する情報を発信する場合があります。ご来場からしばらくの間は、dikeのツイッターアカウントFacebookページを定期的にご覧ください。
直接のご連絡を希望される方は、会場で用意した用紙にお名前、連絡先をご記入の上、封筒に入れてお渡しください。感染症に関する連絡のみに使用し、会期終了2週間後に廃棄いたします。


【プロフィール】

良知 暁(らち あきら)
1980年静岡県生まれ。「投票」をキーワードとする広範なリサーチを基に、表象や制度をめぐる政治性を考察する作品を、テキスト、写真、パフォーマンスをはじめとするさまざまな形式で発表している。また、「歩行」や「質問」といったシンプルな行為による実践を断続的に継続している。近年の主な展覧会に『Quiet Dialogue: インビジブルな存在と私たち』(東京都美術館、2018)、『支流:Looking for the way of resistance』(HIGURE17-15cas、2016)があり、blanClass、art & river bank、TARO NASUなどでも作品を発表している。制作活動のほか、編集や翻訳に携わり、2015年には後藤桜子とともに『Optional Art Activity: summer school』(Take Ninagawa)のキュレーションを手掛けている。


<関連イベント>
トークイベント「お互いのやってることを話す、zoomで」

【日時】2021年1月9日 20:15~22:00
【配信】YouTube(タナランchannel)
【料金】視聴無料
【出演】佐々瞬、良知暁
【公開期限】生配信のみの予定です
【協力】space dike、TURNAROUD

※放送の遅延などが発生する場合がございます。予めご了承ください。
※配信内容を録画するなどして再配信する行為は禁止させて頂いております。

2020年10月24日土曜日

只石博紀 "cursed172212211 / too old to camp"

 space dike(スペース・ダイク)では、2020年10月24日から11月3日に、只石博紀 "cursed172212211 / too old to camp" を開催します。


cursed172212211 / too old to camp

【日時2020年10月24日 (土)、25日(日)、31日(土)、11月1日(日)、3日(火祝) 13:00~19:00
【会場】space dike
 東京都台東区日本堤2-18-4 東京メトロ日比谷線 三ノ輪駅3番出口 徒歩5分
 https://spacedike.blogspot.jp/
 https://twitter.com/spacedike/
 ※最新情報はspace dikeのツイッターでご確認ください。
【入場料】2,000円
※会期中は何度でも入場できます。 ※来場者が多数の時は、入場をお断りする場合があります。



cursed172212211
cursed172212211

Cmposition and performance by Hironori Tadaishi 13:00~16:40


too old to camp

Composition and direction by Hironori Tadaishi+Taku Sugimoto

Performance by Atsurou Shiga Hideyuki Taira Katsuaki Iida Makoto Tanaka Minori Dan Wakana Ikeda Yoko Ikeda Yukinori Kurokawa Official trailer direction by Uichi Majima Photo by Atsuro Shiga Staff: Uichi Majima, Tro Aoishi 13:40~19:00

too old to camp

作曲及び演出 杉本拓+只石博紀 演奏 飯田克明 池田陽子 池田若菜 黒川幸則 志賀敦朗 平英之 田中真琴 檀実のり 13:40~19:00
只石博紀
1981年4月28日北海道室蘭市東町生まれ。
今500万入金があったらやりたいこと「(無回答)」
最近の主な口癖(心内語)「(無回答)」
最近良かったものに「7 minutes of nauseaのdeath versus nausea」「IMPARAの1st Demo」「6.27羽根木公園でTokyo Vagabond Collectiveのメンバーとやったlinesの演奏」
「大塚meetsで見たHer Vomit is Modern…のボーカルの仕草」「Young zetton & bigsos 奇襲 feat.Jin DoggのMV」「釈放後のリズムにはまってない漢のラップ」
「中西香菜と尾形春水のyoutube」「ニンゲン合格の哀川翔」「高円寺で飲んだ時に真島君が話してたこと」「義母と娘のブルース(ドラマ)」「志賀君とスタジオ入った時の#3」
「too old to campの未編集版」がある。


2019年12月29日日曜日

中田粥、竹下勇馬、浦裕幸「北京での日々を振り返る」

space dike(スペース・ダイク)では、2019年12月29日(日曜)に、トークイベント<中田粥、竹下勇馬、浦裕幸「北京での日々を振り返る」>を開催します。


中田粥、竹下勇馬、浦裕幸の3人が、2019年10月に行った北京での演奏ツアーについて、写真や映像を交えながら、滞在中の様子、演奏の模様などを振り返るトークイベントを行います。イベント前半には、3人のソロ演奏も行います。


中田粥、竹下勇馬、浦裕幸「北京での日々を振り返る」

【日時2019年12月29日 (日) 14:30開場/15:00開始
【会場】space dike
 東京都台東区日本堤2-18-4 東京メトロ日比谷線 三ノ輪駅3番出口 徒歩5分
 https://spacedike.blogspot.jp/
 https://twitter.com/spacedike/
 ※最新情報はspace dikeのツイッターでご確認ください。
【入場料】1,000円
(美味しい中国茶とお菓子あり:カンパ制)

【プロフィール】 中田粥 1980年、東京で生まれる。サーキットベンディングをピアノの内部奏法の延長上にあるものと捉え直し、シンセサイザーやリズムマシンなどの電子楽器数台分の短絡させた回路基板を剥き出しのまま積み上げるか、吊るす方法で演奏や展示を行う。 http://www.kayunakada.com/ 竹下勇馬 1982年、大阪生まれ。2001年頃より、ノイズ・即興・実験音楽 (のようなもの) を始める。2011年に東京に活動の拠点を移した後は、特殊楽器の制作も開始。複数のモジュールを取り付けたエレクトリック・ベース "エレクトロベース" や、高速回転スピーカーなどの自作楽器を自ら演奏する。近年は、ほかのアーティストの展示作品への技術協力などもおこなっている。 https://nr-ytmusic.tumblr.com/ 浦裕幸 1984年東京都生まれ。主に実験的な分野での作曲・演奏のほか、サウンドインスタレーションの展示も行う。近年は、北京やモスクワで作品がリリース/リアライズされるなど、活動範囲は国外にも広がっている。 https://www.ura.two-lines.org

2019年9月21日土曜日

FABULOUZ「Don’t Cry TOKYO」

space dike(スペース・ダイク)では、2019年9月21日(土曜)から29日(日曜)10月6日(日曜)まで、FABULOUZ「Don’t Cry TOKYO」を開催します。
※10月5日(土曜)、6日(日曜)も追加オープンします。


2019年9月FABULOUZが3度目の来日を果たします。
FABULOUZはSonic(佐久間洸)、Eagle(間庭裕基)、Martin(万福)の2人+犬で編成される架空のアーティスト・コレクティブです。
2018年7月に美学校主催の芸術祭「明暗元年」で日本のアートシーンにデビュー、同年11月にニュータウンをテーマにした展覧会「SURVIBIA!!」に参加、今年7月には墨田区にFABULOUZ GALLERYをオープンするなど、昨今日本国内で精力的な活動を見せています。
FABULOUZはこれまで一貫して日本の肖像をセルフポートレートを用いて写すことを試みてきました。本展では、戦後民主主義とアンドロギュノスを題材に西洋的近代化を過剰に描いた《ANDRO & GYNOUS》、ニュータウンと聖母子像を題材に共同体の中心を問いかけた《FAMILIAR》の過去2作品に、フリー素材と新興宗教を題材にした新作《FLASH》を加えた“現代の宗教画三部作”をご覧に入れます。そしてもちろん、新しいライフスタイルを提案する《fabulouz channel》の新展開もお見逃しなく!
*これまでの《fabulouz channel

FABULOUZ「Don’t Cry TOKYO」
【会期】 2019年9月21日(土) - 23日(月祝)、28日(土) - 29日(日)、10月5日(土) - 6日(日) 
【開廊】 13時~19時
【会場】 space dike
〒111-0021 東京都台東区日本堤2-18-4 [地図]
東京メトロ日比谷線 三ノ輪駅3番出口 徒歩5分
https://spacedike.blogspot.jp/
https://twitter.com/spacedike/
※最新情報は、space dikeのツイッターでご確認ください。
【入場料】 300円

【アーティストトーク】
9月29日 (日) 18時〜
スペシャルゲスト:松蔭浩之(現代美術家)
司会:木村奈緒
参加費:500円(展示入場料込み)+ 1ドリンク(300円~400円)

【イベント「ファビュゼリヤ」オープン】
FABULOUZと名画《Saizeriya series》を鑑賞しながらワインを嗜もう
日時:9月28日(土)19:30〜21:30
場所:文華連邦 (〒131-0044 東京都墨田区文花1丁目12−10)
http://bunkaunion.com/
*現地集合です
参加費:300円(1ドリンク付き)
*ノンアルコールドリンクもございます
※集合場所などが変更になりました。

2019年7月12日金曜日

浦裕幸 展 「Not(a) Fantasma」音(きこえる/きこえない/みえる/みえない)の展示 / Hiroyuki Ura exhibition "Not(a) Fantasma" Sound installation (Audible/Inaudible/Visible/Invisible)

space dike(スペース・ダイク)では、2019年7月12日(金曜)から21日(日曜)まで、浦裕幸 展 「Not(a) Fantasma」音(きこえる/きこえない/みえる/みえない)の展示を開催します。
English version is below.


先日、仲間と二日間の録音旅行に出かけた。 
初日はずっと雨が降っていて、滞在していた家の天井からは、絶えず雨音が聞こえてくる。それで、外を見なくても、雨が降っていると認識する。 
翌朝、雨はすっかり上がっていて、窓を開けると、鳥たちのさえずりが聞こえる。せっかくなので録音しておこうと、レコーダーを回す。 
しばらくして録音を止め、それをスピーカーで聴いていると、散歩に出ていた仲間が帰ってきて、まだ鳥が鳴いているのかと不思議そうに言う。 
再生を止めると、すでに鳥たちは鳴いていなかった。 
見ていることと、聞こえてくる音が一致しないとき、音の存在について考える。 
2019年6月
浦裕幸


浦裕幸 展 「Not(a) Fantasma」音(きこえる/きこえない/みえる/みえない)の展示
【会期】 2019年7月12日(金) - 15日(月祝)、19日(金) - 21日(日)
【開廊】 金 16時〜20時 土日祝 13時~19時
【会場】 space dike
〒111-0021 東京都台東区日本堤2-18-4 [地図]
東京メトロ日比谷線 三ノ輪駅3番出口 徒歩5分
https://spacedike.blogspot.jp/
https://twitter.com/spacedike/
※最新情報は、space dikeのツイッターでご確認ください。
【入場料】 300円

【トークイベント】※トーク中は展示をご覧になれません。ご了承ください。
7月14日 (日曜) 18時〜
出演 : 金沢健一 (彫刻家)、浦裕幸
観覧料:600円 (展示入場料込み) + 1ドリンク(300円~400円)
※浦裕幸によるミニコンサートあり

【座談会】
7月20日 (土曜) 18時〜
出演 : space dike(畔柳寿宏、畔柳佐季子)、浦裕幸
参加費:展示入場料+ 1ドリンク(300円~400円)

【プロフィール】
浦 裕幸(うら ひろゆき)
1984年東京都生まれ。主に実験的な分野での作曲・演奏を行うほか、サウンドインスタレーションの展示、彫刻家、映像作家、ダンサーとのパフォーマンス、海外ミュージシャンの来日公演の企画など、音楽を通じて国内外の様々なアーティストと交流がある。 これまでの主な展示に「Scores 金沢健一+浦裕幸」(ギャラリーなつか/東京、2018年)、「ゴーストノート」(おみせ/東京、2017年)、「群馬青年ビエンナーレ」(群馬県立近代美術館/群馬、2012年)、「普段考えていること」(MASUII R.D.Rギャラリー/埼玉、2011年)など。
http://www.ura.two-lines.org


Hiroyuki Ura exhibition "Not(a) Fantasma" Sound installation (Audible/Inaudible/Visible/Invisible)

[Period]
12th (Fri.)-21st (Sun.) July 2019

[Open Hours]
12th (Fri.) 16:00-20:00
13th (Sat.)-15th (Mon.) 13:00-19:00
16th (Tue.)-18th (Thu.) Closed
19th (Fri.) 16:00-20:00
20th (Sat.)-21st (Sun.) 13:00-19:00

[Venue]
space dike
2-18-4, Nihonzutsumi, Taito-ku, Tokyo
Nearest stations: Tokyo Metro Hibiya Line Minowa Sta. (5 min.)
https://spacedike.blogspot.jp/
https://twitter.com/spacedike/

[Admission fee]
300 yen

[Talk by artist]
14th July (Sun.) 18:00-
Kenichi Kanazawa (Sculptor), Hiroyuki Ura
Fee: 600 yen (include admission fee) plus drink (300 yen-400 yen)
*We have small concert by artist.

[Talk with artist]
20th (Sat.) July 18:00-
space dike (Toshihiro Kuroyanagi, Sakiko Kuroyanagi), Hiroyuki Ura
Admission fee plus drink (300 yen-400 yen)

2019年3月16日土曜日

オルタナティ部|公開インタビュー:畔柳寿宏、畔柳佐季子(space dike)


space dike(スペースダイク)は、2019年3月6日(土曜)に、水戸芸術館現代美術ギャラリーで開催される創作と対話のプログラム『アートセンターをひらく 第Ⅰ期』部活動:オルタナティ部「公開インタビュー:畔柳寿宏、畔柳佐季子(space dike)」に参加します。


イラスト:かつしかけいた 

以下、facebookイベントページより転載
https://www.facebook.com/events/303347526997319/
創作と対話のプログラム『アートセンターをひらく 第Ⅰ期』 部活動:オルタナティ部 「公開インタビュー:畔柳寿宏、畔柳佐季子(space dike)」 2019年3月16日(土)17:00-18:00 会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー第6室 ゲスト:畔柳寿宏、畔柳佐季子(space dike) 聞き手:良知暁 水戸芸術館現代美術ギャラリーで開催中の創作と対話のプログラム『アートセンターをひらく 第Ⅰ期』内の部活動のひとつ、オルタナティ部の活動の一環として、公開インタビューを行います。 3月16日(土)のゲストは、東京都台東区日本堤(三ノ輪)でオルタナティブ・スペース「space dike」を運営している畔柳寿宏さん、畔柳佐季子さん。町工場をセルフリノベーションしたスペースでは、2014年2月から現在に至るまで、写真や絵画、インスタレーション、サウンドアートの展示、映像作品の上映会、実験音楽のライブ、パフォーマンスの上演など、種々様々な試みがなされてきた。〈制作活動をしているアーティストが「これからも表現を続けていこう」と思えるように、作品を発表する機会を提供〉することを掲げるspace dikeの活動がもたらすのは、単なる発表の機会の提供にとどまらず、企画の相談から来場者との対話を通じて、アーティストに起こるであろう変化なのかもしれない。それはまたオルタナティブ・スペースが何かに対抗するものであるというよりも、創作(と対話)のための環境の重要な一部であることの証左ではないだろうか。 今回の公開インタビューでは、「space dike」という場を持つこと、わからないものや実験的なものへの関心、制作を続けるということを中心に話を聞いていく予定。また、学生時代を芸術館開館当初の水戸で過ごした佐季子さんの体験も伺いたいと思います。 (※オルタナティ部は、2007年から水戸芸術館現代美術ギャラリーの「高校生ウィーク」内企画として始まった部活動「ブカツ@美術館」のひとつとして、本年度より活動を開始。https://www.arttowermito.or.jp/gallery/lineup/article_5043.html ) ーーーーー space dike: https://spacedike.blogspot.com/ ーーーーー 創作と対話のプログラム『アートセンターをひらく 第Ⅰ期』 https://www.arttowermito.or.jp/gallery/lineup/article_5017.html 同企画では、2004年から毎年開かれている無料カフェを第1室に開設。 3月16日には下記のプログラムも開催されます。 14:00-15:00|滞在作家のハロルド・オフェイさんによるパフォーマンス「Lounging」|http://haroldoffeh.com/ 14:00-18:00|視覚に障害がある人との鑑賞ツアー「セッション!」のナビゲーター、全盲の白鳥建二さんによるマッサージと談話のコーナー

2019年2月9日土曜日

室井良輔「super dike / space dike」

space dike(スペース・ダイク)では、2019年2月9日(土曜)から17日(日曜)まで、室井良輔「super dike / space dike」を開催します。
※2月24日(日曜)、3月2日(土曜)、3日(日曜)も追加でオープンします。(2/14追記)


室井良輔「super dike / space dike」
【会期】 2019年2月9日(土) - 11日(月祝)、15日(金) - 17日(日)、24日(日)、3月2日(土)、3日(日)(2/14追記)
【開廊】 金 18時30分〜21時 土日祝 13時~19時
【会場】 space dike
〒111-0021 東京都台東区日本堤2-18-4 [地図]
東京メトロ日比谷線 三ノ輪駅3番出口 徒歩5分
https://spacedike.blogspot.jp/
https://twitter.com/spacedike/
※最新情報は、space dikeのツイッターでご確認ください。
【入場料】 300円

【トークイベント】※トーク中は展示をご覧になれません。ご了承ください。
2月11日 (月祝) 16時30分〜
出演 : 平間貴大(新・方法主義者)
同日、18時〜
出演 : 浦野玄馬(地理学)、畔柳寿宏(写真家・space dikeディレクター)
2月16日 (土) 18時〜
出演 : 石井香絵(美術史研究)、畔柳佐季子(space dike主宰)

参加費:500円(展示入場料込み)+1drink(300円〜400円)


室井良輔(むろいりょうすけ)
1983年生まれ。家具製作・木工内装、グラフィックデザイン、ウェブデザインの経験から作品制作をしている。アーカイブ(記録、収集、保存、整理)が気質。 http://archive661.com/



はじめに(前提)

5年前に東京・代々木の20202ギャラリーで作品展示を行った。その後自分自身は仕事変えたり引越ししたり結婚したり、目に見える変化があった。世の中では地震があり台風があり、それより前には震災があり原発事故があった。それでも生活があり、バラエティ見たり買い物したりご飯食べたり寝たり、日々が続いている。

展示見たり町歩いたり写真撮ったり、夜中働いたり車乗ったり食器棚作ったり、飲みに行ったり岐阜行ったり人と出会ったり、病院行ったり姪や甥と遊んだり部屋整理したり、指をけがしたり風呂入ったりネット見たり、雨に降られたり100均行ったり整体行ったり。日々には能動的に「する」ことと、思いがけず「なる」こと、すでに「ある」ことが入り混じっている。



今回の展示で考えていることは大きくふたつある。ひとつは「彫刻」について。もうひとつは「場所」について。

以前から彫刻に対して興味とわからなさがあった。彫刻というものをどう見たら良いのか。具体的には、人はそこにある立体物の量感(ヴォリューム)をどう把握しているのかということ。

彫刻における量感とは、構造や動き等と並ぶ造形要素のひとつと考えられる。「存在感」と言い換えられることもある。
たとえば仏像や神像を見るとき、何らかの崇高さや神秘的なものを感じたりする。そのとき"人は"いったい何を見ているのか。あるいは見ていないのか。「何を」感じているかではなく、「何が」それを感じさせるのか。
そこで視認できるのは、色や凹凸、木目の流れ、鑿跡、光による陰影、大きな輪郭としての形、目を描く線、衣を表現する波打つ面、そういった対象の表面にある肌理に過ぎないはずだ。にもかかわらず、"目の前に"ある表面を視ながら、目に見えないヴォリュームを感じている。
少なくともそこで感じることの"契機"は、そこに「ある」即物的な表面にあるのではないか。



そして場所について。

そこにある対象を知覚することとその空間は不可分な関係にあると思う。目の前の物体を見ることは、それが置かれた空間を感じることでもある。
空間とはその部屋の雰囲気・内装・照明、あるいは建物のことかもしれない。公園などの屋外のことかもしれない。そうした空間は町・都市という"環境"のもとにあり、その環境はそれぞれの歴史のもとに成り立っている。


今回展示するギャラリーは東京・三ノ輪にある"space dike"だが、"dike"とは堤・土手のことだ。その名前の由来は、この地の住所にもなっている「日本堤」からきている。
かつてこの一帯は入間川(現・隅田川)の氾濫原にあたり、石浜から鳥越岡の高台からなる自然堤防の背後の広大な後背湿地だった。
この湿地帯は度重なる洪水によってなかなか陸化しなかったが、江戸幕府による荒川をはじめとする治水事業により、1621年待乳山を崩した客土で、浅草の今戸橋から北西方向へ箕輪浄閑寺にかけて堤防が築かれた。その堤防が日本堤だ。日本堤は関東大震災から四年後の1927年取り崩され、現在はdikeの目の前にある土手通りとして痕跡を留めている。
この堤は洪水を防ぐために造られ、大規模地震後の都市機能の回復と都市基盤整備のために崩された。


今東北には、2011年の大震災をきっかけにした防潮堤の建設と嵩上げの工事が進められている。
防潮堤は海と陸との境界に延々と線を引くように造られていて、海への目線を遮るように真新しい白いコンクリートでもって目の前に現れる。
また嵩上げされる土地は、大量の土によってそれまであった風景に別の風景を塗り重ねるように、急速にその光景を変化させている。

しかしそのようなことは各地に今も昔もあったはずだ。"人が"住むために山は切り拓かれ、海は埋め立てられてきた。
たとえば荒川や江戸川沿いにあるスーパー堤防(高規格堤防)も平成から始まった事業であるし、現在でも埼玉・吉川の江戸川沿いで堤防の拡幅工事が進められている。その建設のために、立ち退きがあり道が作られ盛り土がなされ以前の風景が塗りつぶされてきた。


堤防に関わることで言うと、震災後の福島・いわきに訪れたとき、勿来火力発電所近くの岩間海岸沿いに防潮堤の一部が遺構として残されているのを見かけた。
津波によって倒壊した防潮堤の一部が、立っていた時と同じ角度で"置かれている"。一部といっても長さ10m厚み2mはあろうかというコンクリートの塊で、これを大地から折り引き剥がしたという力の存在を感じた。


今回dikeという名前から発想した、かつてここに災害をきっかけに築かれ崩された堤防と、現代様々な場所で災害を想定して造られてつつある大規模な堤防、そして災害遺構として残された堤防をモチーフに制作を始める。



ここで考えているのは、東北や東東京、川沿いの風景を見る体験と、彫刻という対象を視る体験とが似ているのではないかということだ。

対象がそこに在るということを見るには、ものを「そのまま置く」ことだけではきっと不十分で、対象の"前に"立ち止まり考えないといけない。
そこで作家が「する」ことは、形を作り出すことではなく、対象がそこに「ある」ということを認識するための、その姿勢を用意すること。つまり対象を見るためのロジックを作ることであり、それを制作と呼ぶのだと思う。

ここspace dikeの場所を借りて、場を考えるための空間を設営する。この建物に住みながらスペースを運営している主宰のお二人に話を聞きながら、またここに来てくれる方々と色々なことを話して、多角的に制作や場所を考える場になればと思う。それはdikeという場所の意義とも重なるはずだ。


平成30年11月 室井良輔